【法に学ぼう】仮想通貨に対して強制執行をかけることはできるのか?

ビットコインに代表される「仮想通貨」への関心が高まってきている一方で、その法律関係の整備について危険性を指摘する声も多く上がっております。はたして「仮想通貨」に強制執行をかけることができるのか? その可能性について紹介します。

そもそも強制執行ってどんな時に行うのか?

たとえばあなたがAさんにお金を貸していたとします。Aさんは返済の期日になっても全く返済をしてくれません。
その時、債権者は裁判をして債権者が持っているものを差し押さえる事が民法・民事執行法という法律で認められています。

差し押さえる対象は「物」でなければならない

まず差押の対象なのですが、民法85条の「物」である必要があり、「物」とは基本的に土地およびその定着物をいう不動産と、それ以外の動産に分かれます。
「仮想通貨」は実は法律的にこのどれにも当てはまらない可能性があると指摘されています。結果、差押ができないのではないかという事が、問題として提起されています。

なぜこのような議論が?「仮想通貨」の基本的な構造について理解しよう

なぜこのような議論が起こっているのかという事を紐解くには、仮想通貨がどのようなものなのかというベースを知らなければなりません。
仮想通貨の基本的な構造はいわゆるFintech法に則って定められており、取引所に対して口座を開設する事で購入が可能になります。その点では株式やFXとあまり変わりがありません。
しかし、株式は有価証券として、FXは先物商品としての性質を有しており、民法上の「物」にあたることは明白です。ですので、これに対する差押は民事執行法を通して可能という事になります。
しかしながら、仮想通貨には一つ法律が「物」としての評価を与える上でこまった独自のシステムがあります。

分散型台帳技術、いわゆるブロックチェーン

仮想通貨の基本的なシステムとして、「分散型台帳技術」(いわゆる、ブロックチェーン)の仕組みがあります。
基本的に株やFXのような無形の物は「台帳」に収まるようにできています。株の場合は株主名簿、FXの場合は債権者としての情報というような形です。
仮想通貨はこの情報をすべて共有することが可能になっています。その結果何がおこるかというと、口座に預けている仮想通貨が今どこにあるのか? という特定ができなくなります。

民法上の「物」は特定されているものでなければならない

この仮想通貨の分散型台帳技術が民法上の「物」であるというための「特定性・単一性」を持っていないので、差押が法的に可能なのか? という議論になります。
この点を貫いてしまうと、強制執行ができません、という事になり、海外で換金などされてしまうと財産隠匿が容易にできてしまう事になっています。
この点は今法曹界でも議論の最中で、基本的には法整備が必要だという風な形になります。
しかし、現段階での一応の落としどころは取引所に対して口座を開設している点をとらえて「債権」に準じて考えていこうというのが流れになっております。

 

債権執行に準じて差押をするという場合にはどのような流れになるのか

民事執行法は第二章第二節で債権に対する強制執行について規定をしています。その方法について概観します。

債務名義の取得

差し押さえをするためには、「債務名義」というものを取得するところがスタートになります。
専門用語なのでわかりづらいかもしれませんが、大体の場合が「確定判決」、つまり裁判をして相手が上訴してこず、あるいは上訴しきったけれども通らなくて、判決が確定した場合、判決文がそれを果たすことになります。
これをもって、「執行裁判所」と呼ばれる裁判とは異なる職域の裁判所(通常は同じ建物内です)に対して、申立をします。

債権の差し押さえをする場合の用語について知る

Aさんが債権者、Bさんが債務者だとします。Bさんが仮想通貨の保有者であるとするとC取引所に対して有する口座に対する差押をします。
この場合のC取引所のようにBさんが債権をもっていて、Bさんから請求される立場の人の事を「第三債務者」と呼んでいます。
第三債務者であるC取引所は、この差押がされると、Bさんに対する支払い(弁済)が禁止されることになります。
仮想通貨における債務者と第三債務者の支払いの関係については、債務者が第三債務者である取引所にログインをして、仮想通貨を売却、自分の銀行口座に入金させるという行為になります。
 債権執行の通知をうけた第三債務者である取引所は、この引き出しをさせないためにログインできなくする方法を取る必要があります。
技術的にはID(あるいはメールアドレス)の凍結やパスワードを変更し、ログインできないようにするといった行為がこれにあたる事になります。

第三債務者から債権者への転付

差し押さえを受けた第三債務者は債権者に対して支払わなければならなかったものを債権者に引き渡しをすることになります。
この第三債務者の債権者への支払いの事を「転付」と呼んでいます。

もしあなたが強制執行が必要になった場合には誰に相談をすればいいのか

法律問題に関しては士業が多くどの士業に相談すればよいかわかりづいらいと思いますが、仮想通貨の強制執行に関しては弁護士以外はありえないと思います。
なぜなら司法書士はいちおう、裁判も簡易裁判所の管轄での代理権と債権執行に関する書面の作成の代行権限が法律上みとめられてはいます。
しかし、法改正がない現状では、おそらく負けた側は控訴をすることが予想されます。これに司法書士が対応することができないからです。
ですので、まず債務者に対する「債務名義」である確定判決をしっかりとってもらい、その上で上記のような仮想通貨独自の法的問題についてきちんと理解している弁護士が良いでしょう。

 

まとめ

仮想通貨の強制執行について、現状の法整備が間に合っていないこと、一応現状の法的構成が債権執行であり、その場合の債権者・債務者・第三債務者という用語の説明と、それぞれがどのような動きをするのか、相談するならば弁護士に相談する必要があること、という事についてお伝えいたしました。
Fintech法の整備など徐々に法整備は整いつつあるものの、法整備が技術革新に追いつかないまま進んでいるのが「仮想通貨」の世界という事になることをしっかりと知っておく必要があるでしょう。

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